運命の扉

FE聖戦の系譜─7巻(文庫)

この巻は、聖戦の系譜にハマった全ての人間に、購読することを推奨します。ヘンな画は仕様だから気にしない。食わず嫌いはよくありません。この巻を読めば、前後が気になって全巻揃えることになるかもしれませんよ。
以下、感想。エムブレマー以外の方は、読み飛ばしてください。
前巻までのあらすじ:バイロン卿逝去。アンドレイたんとバイゲリッター散る。
原作は、ウォーシミュレーションRPGということもあり、このあたりはサイシュウヘイキ同士のガチンコバトルとなるのだが、大沢版では次世代への伏線(特に子どもの出生地)をはりつつ、大河ドラマ的なオリジナルの考察が繰り広げられる。このオリジナルが原作よりむしろ良い! 大沢のネームはもちろん素晴らしいのだが、美味しいシーンの台詞(五章後半の夫婦の会話など)はゲームそのまんまということに、ネット徘徊していて気が付いた。原作の世界観及びテキストは大変重厚である。加賀さんスゲー。原作はまた、BGMが秀逸だしなぁ。
冒頭はリューベック城における“大陸一の斧使い”ランゴバルト卿との一戦。腹黒ランゴバルトの騙し討ちによる城内戦と、レックス夫婦との親子対決が描かれる。エリート君とランゴバルトの葛藤が大変面白い。ここで、アイラたんは人生初の流星剣を発動。流星剣をかわすランゴバルト卿の残像渋過ぎ。卿は、同じ聖戦士の血筋であるドズル家がバーハラ王家と従属関係にあるのが気に喰わなくて、クルト王子を殺害したらしいdeath。なんつー思考回路だ。正直、斧ごときでロプトウスとベルクローゼンに挑むのは無謀。しかし、奴の生き様は時代劇の悪代官のようで、めっさカコイイ。
原作ゲームではノイッシュ・アレク・アーダンの三人しか登場しない(しかも激弱)シグルド付のグリューンリッターであるが、漫画版では大勢登場。主に殺られ役として、この巻でも大活躍(爆 サンディマのフェンリルを喰らい、エルトシャンのミストルティンの錆になり、ドラゴンナイツの手槍の串刺しとなり、グラオリッターに寝首を掛かれと、散々な目に遭い続ける。騎士様の筈なのに、半熟英雄の兵士よろしく文字通りの使い捨てキャラだね。同じくその他大勢でも、ジャムカ率いるヴェルダン弓兵部隊は、蛮族のクセに要所要所で大活躍し、死傷者も僅か。せつないね。
エーディンとラケシスは、オイフェたん&シャナンと一緒にイザークに落ち延びる。大沢版シグルド編では美少年たるオイフェの出番が何故だか少ないなぁ。ゲーム前半では軍師として登場シーンがやたら多いはずなんだが。逆に美少年シャナンの出番が多いし。個人的にシャナン×オイフェというイメージがあるんだけど、実際の人気はどんなもんなんすかね。
ょぅι゛ょアルテナ(*´Д`)ハァハァ 園児服で赤ちゃん言葉でちゅよ!? 全国のエムブレマーから、いつか刺されますね、本当に。イード砂漠におけるドラゴンナイツVSランスリッターの死闘は、原作でも泣きどころだけど、漫画版は、殺伐としたこの私ですら涙腺がゆるむくらい凄惨。前巻でトラバントの命を助けてしまったエスリンは、自分の蒔いた種を刈るべく一騎打ちを挑むが敗れ、人質とならぬよう自害。自分を救ってくれた女と気付いたトラバントは呆然とし、逆上するキュアンのゲイボルグに貫かれんとするその時、捕虜となったアルテナが盾にされる。キュアン最期の捨てゼリフと、トラバントの悔恨のシーンは、燃え尽きるほどヒートなこの巻のなかでも瞬間最大視聴率をマーク。トラバントがアルテナをょぅι゛ょにして育てる因縁が美しく描かれた。どうでもいいけど、トラバントはロリ…。
フィノーラはザールブルグそっくりだなぁ。領主を「領主殿」と呼ぶのは大変不自然であると思う。○○(名前)様が適当だろ。フュリー隊の女の子やグラーニェには名前を付けたのに、どうしてまた名無しですか。ヴァハ殿が持っている魔法剣は祈りの剣のはずなんだけど、どう考えても炎の剣にしか見えない。マゴーネがまたカコイイ。ザインと随分外見違いマス。大沢に七三キャラを描かせたら天下一品だな。ドラゴンナイツを狩るジャムカの顔がダークマージに見えるのは気のせいか。ついにティルフィングを手にしたシグルドの表情の高ぶりと、ヴァハとの一騎打ちがまたイイ。残像剣まで咬ますし。妹夫婦を偲ぶシグルドはせつない。
アイーダ将軍とアルヴィスに男女の関係はどう考えてもなさげなんだけど、どうやったらサイアス君が生まれますか? アゼルとアルヴィスの最後の会話も悲し過ぎる。ゲームでは怒って父親を黒焦げにする鬼っ娘ティルテュも、漫画では健気に説得を試みる。フリージ親子には、実は温かい血が通っていたのか。「野望の行く末などこんなものか…」って、レプトール卿はランゴバルト卿のようにバーハラ王家転覆そのものが目的というよりは、単に一国(アグストリア)の王家になりたかっただけのようだ。アゼルには「彼にとっては胸躍る夢……だったのかも知れない」なんて悼まれちゃうし。トールハンマーを引渡したのに、騙し討ちでメティオ虐殺だなんて酷い。この後、北トラキアに国替えされたうえ、さらに戦死者続出では、フリージも本当に浮かばれないなぁ。アゼルとティルテュが、真相を知りつつもヴェルトマーの刺客に追われてシグルドと連絡がとれず、シレジアに逃げ延びるのも非常に上手い伏線。
残ったカップリングは、クロード×シルヴィー、エーディンさんの下僕×鰤たんで成立したっぽい。ゲーム同様、可哀想にデューは鰤たんに相手にされず。改めてみると、大沢版のカップリングはストーリー的に最も妥当な選択である。
そして、バーハラの虐殺…。それにしても、クロード卿はものわかりが良すぎるというか、諦めが良すぎると思うのは私だけですか。他の聖戦士や、アウグストやスルーフなどのブラギ僧、各国のゲリラは精一杯運命に抗っていくというのに、失礼なやっちゃ。
感想なっがー。それだけ中身の濃い一巻ということデス。FEオタってキモイデスネ。ソウデスネ。