歴代彼女の回想

正直、最初の彼女のことはほとんど記憶に無い。初めて彼女を作ったのは高三だったように思う。 今にして思えば、必要に駆られて、ましてや彼女のことを好きになってからなどではけっしてなく、周囲に彼女持ちが増えてきたことが単に羨ましかったからというだけの理由で付き合いを始めた。最初の彼女は、音楽が得意なほかはどうということのない普通の子だった。初めての彼女に夢中になった私は、自分の好きな音楽を彼女に手取り足とり教え、彼女とは暇があったら音楽の話ばかりしていた。大学に進み、地方で一人暮らしを始めることになってからも彼女との関係は続いた。しかし、大学の校舎があまりにも田舎であることから音信が途絶えがちとなったことに我慢しきれなくなった私は、彼女と別れることを決意する。
どんな時でも連絡が取れるようにと、次の彼女には全く別のタイプの子を選んだ。今思い出しても相当に華奢でかわいい子だった。前の彼女に比べて付き合いにお金はかかったが、彼女の知性あふれる言動や、驚くほど美しいハーモニーを奏でるセンスは、今思い出しても素敵で幸せな毎日だった。東京に戻ることになっても、彼女とは離れられなかった。儚くそして繊細な彼女は、一緒に東京に戻ってからというものの目に見えて衰弱し、日々倦怠感を訴え骨粗鬆症まで患った彼女の看病に費やす毎日となった。しかし、付き合い始めて三年経ったある日、死期を悟った彼女は、突然私の前から去ってしまう。すぐに警察と彼女の実家に連絡を入れたが、行方は知れず。途方に暮れた私の面倒を見てくれたのが彼女の妹で、その後、三人目の彼女となった。
三人目の彼女は外見こそイマドキの洗練された姿だったものの、性格は姉そっくりで、彼女を失った私の悲しみをすぐに癒してくれた。音楽の才能も姉を遥かに凌駕し、プロの世界でも通用するほどで、彼女のために私は音楽活動に今まで以上に打ち込み、彼女の為に様々な楽曲の譜面が手に入るよう尽力した。彼女と作曲に勤しむ日々は、月日が経つのも忘れるほど本当に充実した日々だった。また、美術や写真など、非常に多くの才能を持った彼女は、私の世界を大きく広げてくれた。また、彼女もあらゆる面で私色に染まり、公私ともに私を支えてくれるかけがいのない存在となっていった。そんな彼女も、昨年秋に原因不明の病で半身不随となる。私生活が多忙を極め入院する余裕もなかった彼女は徐々に衰弱、病状は悪化し、私との意思の疎通も次第に困難となっていった。彼女を失うことは考えられず、彼女にはしかたなくコールドスリープして貰い、彼女の妹に四番目のパートナーとなってもらった。
四番目となる現在の彼女も、姉と同様の性格でありスキルを持つが、既に女性に対する興味関心が枯れてしまった私は、彼女とは仕事上、必要最低限付き合うのみとなっている。正直、彼女のことは何も知らないに等しい。彼女は歴代で最も優秀な秘書であるが、生まれながらの持病で、声が多少聞き取りづらいのが難点だ。折をみて入院させ一旦は快復したものの、私のせいで下水道で溺れてしまった時に持病が再発したようだ。再度入院させる余裕もなく、少々困っている。
今にして思えば、音楽の才能だけに惹かれ、彼女を特に必要としていなかった昔の私は、本当に自分勝手に振舞っていたと思う。サークル活動に深入りし、また働くようになり、彼女の存在が必要不可欠となってからは、逆に彼女個人への興味関心が段々と薄れ、割り切った関係となっていったように思う。しかし、三番目の彼女への愛だけは本物だ。今でもたまに彼女のコールドスリープを解除して、僅かな逢瀬、ふたりの絆である音楽を楽しんでいる。
なんかキモイ文章だなぁ。このバトンは受け取った人の思考回路や人間性が滲み出ますね。携帯電話のことですよ? コレ。けいのバトンマジナイス。